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江戸時代の結婚式ってどんな感じ? 縁談から祝言、宴の余興まで

シブチカ落語研究所
2 日前
読了時間: 8分
江戸時代の結婚式「祝言」は、親族や仲人が集まる自宅で行われていました。盃を交わし、料理や酒、祝いの余興を楽しみながら、夫婦の門出を祝ったのです。
江戸時代の結婚式「祝言」は、親族や仲人が集まる自宅で行われていました。盃を交わし、料理や酒、祝いの余興を楽しみながら、夫婦の門出を祝ったのです。

公開日:2026年10月25日

文=シブチカ落語研究所


結婚式といえば、ウェディングドレスや白無垢、華やかな披露宴を思い浮かべる方も多いでしょう。


では、江戸時代の人々は、どんな結婚式を挙げていたのでしょうか。


当時の庶民は、自宅に親族や親しい人々を招いて結婚を祝うことが一般的でした。神社や結婚式場ではなく、普段暮らしている家が、そのまま結婚式の会場になるのです。


そこでは、新郎新婦が盃を交わし、料理や酒が振る舞われ、おめでたい謡や余興で宴を盛り上げることもありました。


江戸時代の結婚式は、今でいう人前式やホームパーティにも通じる、身近な人々に囲まれたお祝いだったのです。


結婚相手の見つけ方から、夫婦の誓い、衣装、料理、宴の楽しみ方まで。江戸時代の結婚事情を、落語に描かれた婚礼の風景とともにのぞいてみましょう。


江戸時代にもお見合いがあった! 結婚相手はどうやって見つけた?

江戸時代には、親や知人が間に入って縁談を持ち込んだり、お見合いをしたりする習慣がありました。


特に武家では、結婚は家同士の結びつきという意味合いが強く、親や仲人が縁談を進めることが多くありました。また、江戸の町人の間でも、知人の紹介や仲人を通じて結婚相手を探す例がありました。


一方、本人同士が知り合って結婚することもあり、結婚相手の決め方は身分や地域によってさまざまでした。


ところで、この「仲人(なこうど)」とは、どんな人だったのでしょうか。


仲人は、結婚する二人や両家の間に入り、縁談を取り持つ人です。親戚や知人、長屋の大家など、信頼できる身近な人が仲人になるほか、仲人を専門の商売にしている人もいたそうです。


こうした縁談の様子は、落語『たらちね』にも登場します。


『たらちね』では、長屋に住む八五郎のところへ大家が縁談を持ってきます。相手の女性は器量も家事の腕も申し分ない一方、ある難点があって……。


大家が結婚相手を紹介してくれるという、当時の暮らしを感じられる噺です。


江戸時代の結婚式は、自宅で行う「祝言」だった

縁談がまとまり、結婚することになると、いよいよ婚礼の準備が始まります。


江戸時代の結婚式は、「祝言(しゅうげん)」と呼ばれていました。


庶民の祝言は、新郎の家で行うのが基本的なスタイルでした。両家の親族や仲人、親しい人々が集まり、花嫁を迎える準備を整えます。


花嫁が嫁ぎ先の家に到着すると、新郎新婦は盃を交わして夫婦の誓いを立てます。そのあとは料理や酒が振る舞われ、集まった人々が二人の門出を祝います。


自宅に人々が集まり、結婚する二人を見届けて、そのまま宴会を楽しむ。今の家族中心の結婚式にも、どこか似たところがありますね。


また、祝言は、現在の「人前式」のルーツともいわれています。


神職や牧師ではなく、家族や仲人たちに見守られて夫婦になるという点が、現代の人前式にも通じているのです。


婚礼の規模は、家の経済力によっても異なりました。


庶民の簡素な祝言では、盃を交わし、魚の肴と酒だけでお祝いすることもありました。一方、裕福な家では、鯛やアワビなどの縁起のよい食材を使った料理が並び、大勢の人々を招いて盛大に祝うこともありました。


家族や身近な人々だけで祝う結婚式もあれば、華やかな宴を開く結婚式もある。お祝いの形は、今も昔もさまざまだったのです。


結婚指輪はなかった! 夫婦の誓いは「三三九度」で

現代の結婚式では、新郎新婦が指輪を交換する場面をよく見かけます。


ところが、江戸時代の日本では、結婚指輪を交換する習慣は一般的ではありませんでした。


日本で結婚指輪の文化が広まるのは、明治時代以降のことです。


その代わり、江戸時代の祝言で夫婦の誓いとして重要だったのが、「三三九度(さんさんくど)」です。


三三九度は、小・中・大の三つの盃を使い、新郎新婦が酒を飲み交わす儀式。三つの盃でそれぞれ三度ずつ、合わせて九度という名前がついています。


現在でも和装の結婚式で見られる儀式ですが、その歴史は古く、室町時代の武家の礼法の中で整えられました。


江戸時代になると、こうした作法が庶民にも広まっていきます。


さて、今では指輪をしているかどうかが、結婚していることを知る手がかりになることがあります。では、結婚指輪のない江戸時代には、どうやって既婚者を見分けていたのでしょうか。


実は、当時の女性には、結婚すると歯を黒く染める「お歯黒(おはぐろ)」という習慣がありました。


江戸時代中期以降、お歯黒は既婚女性の象徴として広まりました。また、子どもができると眉を剃るという風習もあり、化粧が結婚や出産を知る手がかりになっていたのです。


お歯黒は既婚女性以外にも見られましたが、現代とはずいぶん違う方法で、結婚していることを周囲に示していたのですね。


花嫁衣装は白無垢だった? お色直しにも長い歴史が

江戸時代の結婚式では、新郎新婦はどんな衣装を身につけていたのでしょうか。


武家や裕福な商家の婚礼では、白無垢や華やかな着物、紋付羽織袴など、現代の和装結婚式にも通じるような晴れ着が見られました。


一方、庶民のささやかな祝言では、特別な婚礼衣装を用意せず、普段着で行うこともありました。


そして、結婚式の衣装といえば「お色直し」。


今では披露宴の途中に行われることが多いですが、この習慣にも長い歴史があります。


室町時代の武家の礼法では、嫁入りから2日間は白い衣装を身につけ、3日目に色のついた衣装へ着替える習慣がありました。


江戸時代になると、結婚したその日のうちにお色直しをする形も見られるようになります。


さらに、当時のお色直しには、今とは少し違う意味もありました。


1692年の『女重宝記』では、新婦は新郎から贈られた小袖に、新郎は新婦から贈られた小袖に着替えると説明されているのです。


お互いに贈った着物を身につけるというのは、結婚指輪の交換にも少し通じるところがありますね。


今では披露宴を盛り上げる演出の一つとなっているお色直しですが、もともとは夫婦になることに深く関わる儀式でもあったのです。


結婚式の余興は何をしていた? 落語『高砂や』『松竹梅』

料理と酒を楽しむ婚礼の宴では、おめでたい謡を披露することもありました。


その代表的なものが、能の演目『高砂』です。


『高砂』には、夫婦円満や長寿を象徴する老夫婦が登場します。「高砂や、この浦舟に帆を上げて」という一節は、結婚を祝う謡として親しまれてきました。


この習慣を題材にした落語が、『高砂や』です。


ある裕福な商家の結婚式で、仲人を頼まれた八五郎。仲人なら婚礼の席でおめでたい謡くらい披露できなければならないと、隠居に教えられます。


ところが八五郎は、謡など習ったことがありません。


そこで「高砂や、この浦舟に帆を上げて」という出だしだけを何とか覚え、あとは親戚の人たちに続きを謡ってもらおうと考えます。


しかし、いざ本番になると、思いもよらない事態になってしまうのです。


そして、もう一つ、婚礼の余興を題材にした落語があります。


『松竹梅(しょうちくばい)』という噺です。


松五郎、竹蔵、梅吉という3人の男たちが、名前が「松竹梅」でめでたいという理由から、出入り先の商家の結婚式に招かれます。


せっかくのお祝いなので、何か余興を披露しようと考えた3人は、隠居に相談して、おめでたい口上を教えてもらうことにしました。


松五郎が最初の言葉を述べ、竹蔵がそれを受け、最後に梅吉がめでたい言葉で締めくくる。


ところが、練習の段階から3人は失敗ばかり。ようやく本番を迎えても、肝心なところで言葉が出てこず、せっかくの祝いの席が大騒ぎになってしまいます。


『高砂や』も『松竹梅』も、結婚式の余興をうまく披露しようとして失敗してしまう噺です。


親族や知人が集まるおめでたい席で、慣れない芸を披露しようとする人々。


現代の結婚式でも、余興やスピーチを任されて緊張することがありますよね。


落語の婚礼の場面には、そんな今にも通じる人間模様が描かれています。


江戸時代の結婚式を想像してみよう

ここまで見てきた江戸時代の婚礼を、実際の風景として想像してみましょう。


庶民のささやかな祝言では、新郎の家に親族や仲人が集まり、新郎新婦が盃を交わすと、料理や酒を囲んでお祝いが始まります。立派な衣装や豪華な料理がなくても、身近な人々に見守られて夫婦になる、温かな結婚式が行われていました。


一方、裕福な商家の婚礼では、華やかな衣装に身を包んだ新郎新婦を囲み、鯛やアワビなどの料理が並ぶ盛大な宴を開くこともありました。


そんな席に『高砂や』の八五郎や『松竹梅』の3人組が登場したら、華やかな婚礼もたちまち大騒ぎになりそうですね。


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シブチカ落語鑑賞教室

結婚式で「高砂」という言葉を耳にしたり、誰かの余興を見たりしたときには、江戸時代の婚礼で一生懸命に謡を披露しようとする人々の姿を、少し思い浮かべてみてください。

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参考資料

国立国会図書館「ふりかえるブライダル~結婚式の歴史と文化~|第一章 今に伝わる儀式のはじまり(~江戸)」

公益社団法人 日本ブライダル文化振興協会「今更聞けない?!婚礼知識コラム」

公益社団法人 日本ブライダル文化振興協会「和婚」

国立劇場 文化デジタルライブラリー「登場人物と庶民の暮らし」

国立国会図書館「めーきゃっぷ今昔|第1章 江戸時代の化粧」

ポーラ文化研究所「伝統化粧の完成期 江戸時代6|お歯黒・眉化粧」

京都国立博物館「婚礼の衣裳」

Web千字寄席「高砂や」

Web千字寄席「松竹梅」

​公演日

​開演​

​公演名​

​出演者

2026年11月1日日曜日

11:00

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